armoire caprice/渡 ひろこ
 
駆け上がったスケールの天辺で
頭にティアラを乗せられた途端
3オクターブ下の森へと転がり落ちた
黒鍵に打たれた身体に赤い痣が散る
地面に投げ出された
ティアラの真直ぐで静謐な輝きは
脆い影を抱える私の周りをゆっくり蝕み始める



「アーモワールカプリス」
森の暗闇から梟が低い声で謎掛けをする
光を放つものはクローゼットへ 
掲げてはいけない
アンテナを巡らす蜘蛛たちの網に捕われてしまうから


「アーモワールカプリス」
小枝をすり抜ける蜜蜂が耳元で囁く
嘆きの呟きは寡黙な井戸の底へ 
黒い言葉は吐いてはいけない
サテュロスが匂いを嗅ぎつけ喰いにくるから
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