生まれ変わる/殿岡秀秋
 
荒川放水路にかかる鉄橋に
次兄とぼくは向う
川の土手にある踏み切りから
線路にはいる
手をおくと微かな震え
枕木に膝をついて
線路に耳をつける
太鼓の低い音
「電車がくるぞー」
ぼくらは買ったばかりの五寸釘を
それぞれに線路の上へ置く

鉄橋の向こうに
点になって現れる電車
ゆっくり蜃気楼のように膨らみながら
こげ茶色の車体は
鉄橋を渡りはじめる
ふみきりの遮断機がおりて
警報器が吠える

ぼくらは踏み切りを離れて
土手の草に頭をかくす
五寸釘が飛んでも
当たらないように離れて

電車は通りすぎるときに
「イタズラスルナ
アブナイジャナイカ」
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