指先から臆病/空白さん
 


身近に抱き合えば体ひとつ
こんなにも大きなあなたは
またわたしよりも遥かに
小さなものだと思う

腕におさまらない広い肩は
狭くこごまってわたしに甘え
触れる肌は当たり前に温かい

寝始めは丸く小さい姿も
夜更け頃には伸びきり腕を開いて
大きすぎる子どものようになる

深く長い寝息をたてるあなたの
掌がぱたりと投げ出されて

粉雪に触れたがるみたいに
柔らかな器の形の白い手が
闇に落ちた

白いまま固い指先は
かすかに油の滲みがついている
働き過ぎるあなたの手だ

なめらかとはほど遠いこの手に勝るものを
わたしは想像できないでいるけれど

あなたは何も壊したがらないし
その指先はねじれるように震え
いつも触れる事を怖がっている

あなたがもし花のようであれば
子供のままで赦されたのに

そしてそんな行き止まりのあなたを
また愛しく思うわたしの手は
もっと深い闇の色をしていた





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