MOTHER/ベンジャミン
顔をあわせれば喧嘩ばかり
しょせんは他人なのだと
若い頃は思っていた
(25歳で家を出た)
ぼろぼろになるまで頑張ったのは
家を出たことを負い目に感じて
入院しても知らせなかったのは
ちっぽけなプライドのためだった
(病院を抜け出した)
気がついたら家に居た
母さんは何も無かったみたいに
コンコンとまな板の音を響かせて
まっしろなおかゆにみつばをうかべて
そして
何も言わなかったけれど
涙をうかべていた
(十年近く他人だった)
だけど母さんは何も言わなかった
何も言わなくてもわかってくれていた
すっかり痩せ細った僕を
まるで普通に見てくれていた
僕はたしかに
母さんの息子だった
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