藤の花が空から柔らかに降る春の日/木屋 亞万
 
群れ
なぜ町は彼らを表層へ押しやらないのか
雨に濡れても陽射しを浴びても
彼らの薄い皮はうつくしさ以外の何ものでもない
どうしてプラスティックの花で花壇を満たすのだ
生き生きとした花があちこちで花開こうとしているのに

藤の花が空から降る、春の日
それはパラシュートのように緩やかに降下してきている
ドリルのような円錐状の降下物は紫色に空をぼかしていく
風は強いはずなのにそれらはくるくる回りながら
真っ直ぐに地表を目指している

藤の花のドリルはぶち壊すのだ
青春を閉じ込めるコンクリートを
花を日陰に押しやるプラスティックを
春を覆う憂鬱を削り取ってしまうだろう

ぽかぽかとした陽射しに
炭の燃える音がして
香ばしい肉の焼ける匂いと
鬱陶しい煙が立ち上る

海は夏に向けて濃い藍色をぎらぎらさせて
波の飛沫は若者を呼ぶ
あちらこちらで妊婦が子を産み
いろんな影で老人が死んでいく

藤の花が降り、白い煙は立ち上る
春は外へ出たがっている
解き放て、
そしてもっと
かっこ悪い憂鬱になれ

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