藤の花が空から柔らかに降る春の日/木屋 亞万
藤の花が空から柔らかに降る春の日
青空は鼻水が止まらないようなだらしない水色で
しゃぶしゃぶの精液を塗りたくったような気持ち悪い白さに覆われている
穏やかな日差しが休みでない者たちの足取りを重くする
春ののんびりとした空気は働くものにとって残酷ですらある
なぜ、春に私は働かなくてはならないのか
心地よい風が吹き、花が咲き乱れる春に
なぜ、私は勉強などしているのか
狭苦しい部屋の中で寒さをしのぐように身を寄せ合っているのか
外は春だ、隠れる季節は終わったのだ
義務を捨てて、春へ出よう
動画サイトに春の青々とした曲が溢れている
勢いと水分と張りに満ちた音楽の群れ
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