Many Rivers To Cross/ホロウ・シカエルボク
 




置き去りのボンティアックの錆のオレンジ
助手席に腰かけたままの
過去を
騒がせぬようにと気を使うみたいに
ゆっくりと
やさしく吹く風
口笛を乗せると
母親を思い出す
そんな暑い春の


お前はまるで
間違いで届いた
印象的な誰かへの絵葉書
あるはずのなかった交わりなのに
触れたその時をいつまでも思い出す


不器用な鳥のような
無骨な影を滑らせて
知らない国へ飛んでゆくジェットエンジン
強力なうねりが
俺たちという生き物の
限界を描いている気がした


もう使わなくなった
ダイヤル式の電
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