ピアフの夢 /服部 剛
 
降りしきる、雨と濃霧の街頭で 
足元に、小銭の入った空き缶置いて 
唄う少女の頬に雨は滴(したた)り 
過ぎゆく群に、愛を囁く 

今宵も巴里の夜は更けて 
洋燈の、スポットライトの下に立つ 
在りし日の、エディット・ピアフの面影は 
夢見る者の枕辺に、愛を囁く 

時代を越え、国を越え、「愛の賛歌」の唄声は 
離ればなれの夜に震える 
ふたりの小指を赤い糸で、結ぶだろう 

何処(いずこ)から夜風の運ぶ、いつかの夢。 
恋人の死を越えて、舞台に立ったあの夜。 
幕の上がった暗闇に、無限の拍手は鳴り響く 







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