39番目の卵/はるな
 

39番目の卵が死んで
40番目は私だった

女子高生の持つビニール袋には人間の頭部が入っている
老婆は呪文を探し続け
くたびれた神父は右手に4枚の生爪を持って
満員の最終列車は保育所に突っ込んでいく

順番待ちの列は果てしなく長く
私たちは意味を忘れ
意味を忘れた思考はあたらしい紙に
もともとなかったはずの意義を書き加える

あらゆる夢の中に暗示は光り続け
うすっぺらいコーヒーには死んだ蟻が浮いている
傷跡だらけの雲が流れてゆく空に
耐えきれず卵が自死していく
従業員は菓子を万引きし
手を浸した水はいやなにおいがする

私は通行人に尋ね続ける
40番目は存在しているのか
通行人は尋ね続ける
あなたは存在しているのかと


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