空を飛ぶペンギン/ベンジャミン
忘れてしまったことのいくつかを
からだのどこかで覚えているように
透明な結晶のようなかたちで
胸のおくにしまっている
ひさしぶりに動物園にいった
動物園にはあまりいきたくないのが本当で
それは何か淋しい感情がこみあげてくるのを
からだのどこかが覚えているからだと思う
けれどその淋しさを感じたいと思うとき
頑丈な柵のむこうにいる動物たちを
身近に感じることができる
とても当たり前のことを
「そうだ当たり前なのだ」と感じることは容易だ
たとえばペンギンのところに天井を覆うような檻が無いのは
誰もがペンギンが空を飛べないことを知っているからで
誰もがそのことを当たり
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