車を、手に入れ/番田
街を歩いていく体は、手にさせられるものすらなく、電車の訪れるべき道へと、一直線に歩いてきただけ。川縁にあった道は昨夜に着いた雨でひとしきり、アスファルトとして染みついている。買ったばかりだったスニーカーを滑らせられるようにして歩いていく、景色全体の中を吐かされた息の白さは残されることもなく、そうして身を振り歩いてきた。昔入ったことのある店へ、角に立つ、緑色なコンビニは黙り込んだように今でも営業活動を続けている。友達三人と訪れたことのあったタワーの下を、近くに住んでいるだろう若者たちのたまり場にされていたりもした。夏には、持ち寄った花火をしている連中もいたりしてそこで出会う、名前すら知らぬ者同士でどこかへ連れ立つ姿などを見た。並ぶ鉄柱の電灯は、微少な光の色たちを発している。遠く、紫色をした煙を放つ工業地帯が見えた、物静かなる浜辺をそんな気分にさせられるのかもしれない。閉ざされたコイン・パーキングのそばを停められている車へ乗り込むと、僕らは元来たであろう方面に帰っていく。交通量の少なくなった道路の、街灯からの光により輝かされるようにして見えていた。
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