りんご園/朧月
りんごをむいてゆくと
白のりんごになって
赤のりんごはぺらぺらの
シートにかわった
僕は白いりんごに驚いてしまって
赤のシートに名残惜しそうに
名前をかいた
りんごはお礼といって僕を
故郷につれてった
りんごの木は思っていたより
太かったんだ
りんごはみんなと同じ顔して
違った木になってた
赤のりんごは当たり前だと
僕にいうけど
むいた白のりんごはこっそり僕にいうんだ
青も黄色も赤もそれぞれが
大事なりんごだって
おとうさんは目を細めていうの
これは内緒だよ
僕の名前をかいたりんごの
赤のシートはいつのまにか
りんご畑のプレートになって
僕はオーナーになってた
風がふいた と
雨がふった と
僕はいろんなりんごたちを
親身に心配するんだ
これからの僕は
戻る 編 削 Point(3)