しれっと/かんな
 
通学路の途中
時折り指を折って数えた
まわりで息絶えてゆく生命の数を

意味があるものとないものがあったのだろうか
きっと無意識に指を折り/数え上げるには難しい事実だった
その尊さも憐れさも感じ取っていたのだろう
通学路は広い学び舎で時にひどくつらい場所になる

親指を折ってぎゅっと握りしめた
命の短さはどこにでもあって人さし指もそして折られていった
背負ったランドセルの赤は六年生ともなればもうにごってしまう
/それを中指で数えたのはあの日の放課後

履きつぶされた通学路をあるいて家に着いたある日
めずらしく誰もいない居間にポツンとひとり座っていると電話が鳴る
いつもよりも少しやさしい声で母が一言告げた
薬指は大切な曾祖母の命だった

最後に一緒に折った折り紙はすこしいびつな形で
きれいなものほど簡単に消えてしまうような気がしていたから
あれほどまでに数え上げた死をどこか受け入れられずにいた
(春は終わり、季節はどこかへ行こうとしていた。

小指を折ると
散った桜の花びらが目にとまった



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