みつけられないものってなんだろう/石川敬大
 



俊太郎の詩集を読んだ
俊太郎の詩集を読んで
なにか気のきいたことを書いてやろうとおもったのだけれど
なんの感興も泡沫のようにはたちのぼってこなかった


きのう
街の昔の写真をみたせいだ


いまあるプラットホームよりもずっと海よりで北側の
江戸時代に創業した呉服屋が発展したデパートと肘をくっつけ寄り添って
停車している始発の丸っこい電車になんども乗ったものだ
長姉がこの街に住んでいたから
父母に手をひかれ開いたドアに跳び乗ったものだ
あのころはストレスなんてなにもなかった
手をひかれるままにぼくは黙って随いてゆけばよかったのだから


頭のなかで
[次のページ]
戻る   Point(6)