ときどき僕はまだ羊水の中で/ベンジャミン
 
ときどき僕は、まだ羊水の中で


少し離れた場所から聞こえる声に
そっと耳を澄ませている気がする

それは子守り唄のようで
鼓膜を揺らすほどでもない
優しさを持っている


ときどき僕は、まだ羊水の中で


たとえば争いや憎しみも忘れて
平和の意味を考えることもなく

ただ自然に漂う
風や川や海の波の
そんな自然の一部であることに
何の疑問もいだかないまま
穏やかに瞳を閉じている


ときどき僕は、まだ羊水の中で


生まれることを待ち望み
生まれることが生きることと等しいまま
怖れを知らずにいたことを
思い出そうとしている



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