ときどき僕はまだ羊水の中で/ベンジャミン
ときどき僕は、まだ羊水の中で
少し離れた場所から聞こえる声に
そっと耳を澄ませている気がする
それは子守り唄のようで
鼓膜を揺らすほどでもない
優しさを持っている
ときどき僕は、まだ羊水の中で
たとえば争いや憎しみも忘れて
平和の意味を考えることもなく
ただ自然に漂う
風や川や海の波の
そんな自然の一部であることに
何の疑問もいだかないまま
穏やかに瞳を閉じている
ときどき僕は、まだ羊水の中で
生まれることを待ち望み
生まれることが生きることと等しいまま
怖れを知らずにいたことを
思い出そうとしている
と
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)