何もない過去を/番田
空のない世界は言葉としての全体感すらない。一つの、葉に手を乗せた。庭を向かう風に立つ。僕の思うことなんて失われてしまった、明日に自分の考えとなり馳せる。アスファルトの隙間の芽を芽生えさせた、緑色となって散らばっていく。曲がり角の向こうへ流れていく川の小波としての、手は、抱こうとする。そうだ、自分のみの存在なのだと気づかせられた。夜の中、睡眠となって彷徨う。欲しがっていた商品の存在を、しかし色の違ったボールを手にさせられた河原の自分の、書こうとする詩なのだと、思い浮かべた。その内容の無さをあきれ果てさせた世界じゅうに巻き散らしていく。大海原の彼方として立つ、マンハッタンのビルに囲われた香りを思い浮かべた。俺には、何にもないんだと、思い知らされた。
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