サキ/望月 ゆき
 
こかで死んでようと
 わたしはもう気にしないわ」
なに言ってるの、と明るくかわしたが
泣きそうになった
不思議とサキのことを憎いとは思わなかった

「もしもし、あたし」と
ケロリとした声で電話をかけてきて
サキは帰ってきた
親は叱らなかった
あきれたようなことを言っていたけれど
母は心底嬉しかった
だろう
わたしは

サキはその後はたちで結婚し
十年後に離婚した
子供はない
なくてよかったね、と周りは言うが
どうだろうか
子供がいるわたしにはわからない

サキが離婚するまえ
はじめて呼び出され
生まれてはじめて
ふたりきりで外で食事をした
そして最後に言った
いつも迷惑かけてごめんね
なに言ってるの、と明るくかわした

あれからずっと
サキからの電話は
ない
サキは今もどこかで生きている
サキとは昔から似てなかった
サキは生まれたときから妹
だった
たぶん、今もそうだ
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