滴下のトランス/salco
れ行く屍を離れはしない
口一杯に溢れ来る命をその都度同衾の恋人に口移ししてやりながら
眼窩の虚ろからも落涙の蠢動をとめどなく注ぐだろう
これだけが幸福な結末だ
別離も涅槃の半睡も望まない苛烈な恋人達の入滅は
存在を欲し苛み合う覚醒を置いて外にない
既にして死の婚礼が予約されてあるのだ
こうして破滅へ至る道をどこまでも結ばれた、
やはりオレとお前も精神的・肉体的シャム双子に他ならない
二人一体 愛の怪物
無残なオレ達の引きずる奇怪な影の濃密に触れた万物は
毒にあてられ枯死するだろう
究極というトランスは、時間という堕落を容れない
世界という無意味は存在を許されない
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