おんなの晩餐/朧月
 
祖母はいつだって母の跡を消そうと
黙ったまま手縫いの布で
家のあちらこちらを拭いてゆく

母は眉間に皺をよせて何も話さない
祖父は しんでしまった祖父は
なぜ遺影になって笑ってるんだろう

私のコーヒーカップが欠けているのに気付いて
そっと置いた

テレビがよくしゃべる夜
みなで集まっての夕食
食卓の真ん中の皿には
手をだせない沈黙

おんなばっかりだから
寡黙なのかな
おんなだから皺が気になるのかな

わたし

祖母

三人ならんで座っていると
ほら授業で習った
人間の歴史だよねと

いない祖父に話しかける
祖父の席は
今は私の隣の席

祖父が お前らっていったのは
私たち全員にだったんだよ
そんなこと言えない雰囲気で
静かな夕食はすすむ


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