五月の窓/未有花
ようやく僕の窓にも光が差して来て
暖かな日差しを感じるようになって来た
めいっぱい窓を全開にすれば
この病んだ部屋にも新鮮な空気が入って来て
まるで心が洗われるよう
しばらく窓辺で風に吹かれていると
おいで
そこから出ておいでと
誰かが僕を呼ぶ声がする
その声に導かれるように
窓に手をかけ足をかけ
思いっきり窓の外へジャンプすれば
ああ なんて眩しいんだろう
僕が窓を開けない間に
季節はいつの間にか夏に変わっていて
何もかも緑色になっていた
いつもは窓辺を飾る花が
もうすっかり散ってしまっていて
ちょっぴり残念だったけど
僕の大好きな季節がやって来る
そう思うだけで心はときめいて
この緑に今にも溶けてしまいそうだよ
もうあの部屋に戻れなくったってかまわない
いやむしろ戻りたくない気分
このまま緑の中へエスケープ
僕は風になるんだ
戻る 編 削 Point(14)