壊れもの/千波 一也
 
くを呼んでほしい
ぼくだけを呼んでほしい

いつしかぼくが
取り返しのつかない壊れ方をするとき
かなしい機械たちのような
安っぽい惜しみ方を
きみが
覚えてしまわぬように
壊れもののぼくを
慈しんでほしい

迷わずぼくは
それにこたえるから
こたえてきみに
春をあげるから

常世のはじまりの
春をあげるから


そんなわけで、さ
雑踏のなかの
心地よい死角でさ
セックスしようよ

なんにも持たない
ぼくと
きみと


壊れるくらいに
愛の途中で









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