無自覚/榊 慧
 
無理しないでやってける人はそれを無理してやってくしかない人に気づかないからね、仕方ないんだよ、とさとしがぼくに言う。さとしは林檎酢を五倍に薄めている。ぼくは俯いた。俺は無理してやってる人にも気づかれないしね、とさとしは少しだけ言いかけた。が、薄めた林檎酢を飲んですぐにやめた。無意味だ。さとしは林檎酢の入ったグラスを僅かに揺らす。

眠いなあと課題を放棄してしまっていて自己嫌悪にも陥ったが今更なあとぐずぐずしている。眠い。ずっと寝ていられるなら、と考える。ずっと寝ていられるなら。ずっと眠っていられるなら。それだったら今すぐに眠りたい。つまり死にたいのか、と考えてパソコンを打つ。無意味に。俺にはあ
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