春色慕情/生田 稔
春色慕情
無関無色といえること
五月の夜に悟れり
本を買わず
本を失わず
酒食を節し
心の赴くさまに
生きて禍なし
完成はせず
技を磨かざるべからず
常に研さんして
常に休みを求め
妻のかたわらに坐して
世を通りぬけ
金銭を備蓄して
神を常に念じ
人に連なるを辞して
人をもてなし
歌を作り詩を賦し
移りゆく景色に
心を広くし
不逞の輩と交わらず
春風のごと
春の水辺の草に似て
山を眺むばうす曇り
浅きみどり,濃きみどり
たがい競いて
春の景色は賑々し
いまだに残る
五月の桜
わが生まれいでし五月
何を思う
幸いなるかな
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