竹林/春日線香
ンキ肉を
竹箸の先にひときれ引っかけて
燃えさかる炎の中をひらひらと
旗を振るかのごとくに舞い踊らせる
すると炎は様々に色を変え
肉はしゅうしゅうと煙をあげて
なるほどうまそうに焼けるのだ
ひとつどうぞと勧められて相伴にあずかったが
塩味にかすかに土の香りが乗り
滋味豊かでなかなかの味わいだった
さて宴は深更におよび
丑三つにも達しようとした頃
そろそろお開きに
という主人の合図をきっかけに片付けがはじまった
今宵はいい夜になりました
これは少ないですが と謝礼も十分いただき
なんの文句のあろうはずがない
倦怠につつまれて辞去してみれば
灯の消えた広場には
歯を青々とペンキまみれにした人びとが
暗闇にまるで竹林を風が抜けるように
さらさらさらさらと揺れ動いていた
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