『月面着陸』/東雲 李葉
 
でる
何て言っていたのか
あえて
僕は聞かなかった
それは誰への
手紙だったのか
なんとなく
分かった気になっていた

いくつ目かの昼か日暮れか
(夜更けかも知れないし
朝方かも知れないけど)
君は目に涙を溜めて
かえりたい と
確かに言った
ぼくもそうさ と
素直に言えた
自分の声も 忘れていた
だけどもう
宇宙船は動かなくて
無機質に輝く流線形
なぞるだけの果てない孤独

さよなら さよなら
青い惑星よ
さよなら さよなら
僕らは黄色い砂になる

さよなら さよなら
光年先の未来のふたり
さよなら さよなら
僕らは涙の海に溺れる
戻る   Point(1)