閃篇Ω ちょっとSM/佐々宝砂
夕暮れの窓辺で君は、膝にとまる蚊をみていた。君は決して蚊を叩かない。君は蚊に刺されながら、蚊よりはるかに太く鋭い刃に刺されることを夢みる。僕は刃を持たない。君が蚊に刺されるのを見ながら君の髪を撫でる。愛していると言ったら君は喜ばない、そう、そうなんだ。
***
君はしばしば何かを見上げ、その首筋が無防備に白いので、僕は噛みつきたくなる。でも僕は吸血鬼じゃないし虫歯だらけ。ポケットからナイフを出し、紙より雪よりもろく見える首筋に刃をあてると、君は僕を悲しげに見下ろす。言葉も肉もかなわないものを贈りたい、でも。刃を、君に。
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私から出た最も汚れたものをそのまま体内にとりこ
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