勝負/殿岡秀秋
ぼくも仲間になれた
長兄がいたからといって
ぼくの玉がはじきだされたら
取られてしまうことに変わりはない
けれどもバリアーに包まれたような
安心感があって
ぼくはビー玉を投げて
あまり見たことのない
年上の子のビー玉をとることもできた
小学校にはいったら面子がはやっている
クラスの子どもたちと遊ぶときに
自分の面子が取られるのがいやだった
そこには長兄のような
頼りになる人がいなかった
綺麗な面子を見つめる
子どもたちの突き刺してくる視線にかこまれて
ぼくは
木製人形のようにぎこちなく
面子をふりおろす
力は肩にはいるだけで
面子に伝わらない
風が顔にあたり
弱弱しくコンクリートに落ちていくぼくの面子
待ってました
と次の子がぼくの面子を狙う
祈るように見ているが
ぼくの面子は裏返されて
取られてしまう
ぼくはたったひとりで
勝負と向き合う
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