白い言葉/窪ワタル
 


届く宛ての無い手紙を出すわけにも行かず
文集の余白にそう書いて
ページごと制服のポケットにねじ込んだそれを
体育館裏の焼却炉に投げ入れてしまった
焼却炉の四角い口から吐き出された欠伸声が
耳の底で泣いた


空を手に入れることも、無機化合物なることもできないまま
なんとなく大人になっても、悪癖は貪欲に好意を捕食しながら
胃下垂のようにだらしなく膨らみ続け、やがて
誰かに会いたいときには電話をすることを覚え
話を聴くときには、相手の目を見るといいと知った

会話をするのは、植物が根を伸ばして
結果として、互いに支え合うのと似ている
根の先端の方の繊毛が

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