Smith said nothing / ****'99/小野 一縷
パンクした ぼくの可愛い自転車
引きずって 帰り道
墓地の門の前で佇んでいた 女の子
荷台に乗せて ガタンゴトン
タイプライターのキーだけが不満の吐け口
「ぼくは大詩人になる」なんて大口が口癖
そんな ぼくは
キーツとイェイツに憧れる文学少年
そんな ぼくの
左手首の傷痕を指差して
クスクスと笑ってシーツと戯れて
嫌悪と慈悲を一つに溶かした
その 苦々しく甘ったるい 眼差しで
軽々しく 彼女は言った
「安心には もう飽き飽きね」
重々しく ぼくは言った
「不安には もう飽き飽きだ」
ジェイムス ディーンより魅惑的で
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