二十歳/寒雪
 


二十歳になる前の日
やることもなくて
働いていた
変わりない生活
何かが新しく
変わるわけじゃない
分かってた
ただ
天文学上
戸籍上
二十歳になる
それだけのこと


子供の頃
思い描いた二十歳の私
立派な大人になっている私
現実は
二十歳になるのに
やんちゃ坊主が一人
こんなはずじゃないという焦りと
こんなものだろうという諦めが
微妙な角度でからみあう


忙しい自分が消えると
落着かなくて
いたたまれず家を飛び出した
時計台の下に来て
することもなく
ただ、
 星が瞬くのを見ていた


やがて十二時
私は二十歳になる
でも、
    一秒前の自分と
   一秒後の自分
愛しい自分に変わりなかった


二十歳になった日
生活に輝きはなく
昨日までの
断ち切ることの出来ない日常が
私の前でくだをまく
私は
二十歳になっても
変わることのない自分を思いながら
太陽に向かって
大きく一つ伸びをした

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