待ち続けるひと/恋月 ぴの
 
勤め先近くに珍しい衣装を扱う洋服屋さんがある
どんなのかっていうとお笑いの人とかが舞台で着るようなやつ
スパンコールちりばめられた真っ赤なベストが店頭に飾られていて

開店直後らしい午前中の早い時間に店内を覗いてみると
とっくに看板娘退いたような老婆がハタキをかけてた

ぱたぱたと元気にハタキ踊りだせば
季節はずれの曼珠沙華とか薄暗い店内に花開いたようで

お客さん入ってるの見たことないんだけどさ

これで今日の仕事は終えたとでもいうのか
頑なに閉ざしたガラス戸の奥から客待ち顔を通りに向ける

一見客でも吸い寄せようと睨んでいるようにも窺えて
うっかり気を許せば真っ
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