泣いていいよ/吉岡ペペロ
 
ぼくは泣いていた
川端康成の伊豆の踊り子にでてくる
それは涙ではなかった
もっと肉に近かった
もっと欲に近かった
藤沢周平の物語にでてくるそれは涙だった
育ての親と契ってしまった娘がいた


鉱物のようなひかりが
宇宙を旅するひかりが
引力や重力を気にしながら
風になって運ばれていた
遠くから鈴のような音色がきこえていた
ぼくは風はひかりはそこに届こうとしていた
それは性的緊張を煮詰めてゆくような作業だった

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そしてぼくは風は
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