モホロビチッチ・シンドローム/たりぽん(大理 奔)
静かに蒸発するためには
まず、皮膚を脱ぐことが必要らしい
触れることが楽しいのは
まだ溶け込むことを知らないから
お互いの、もっと内側に近いところで
それでもふれあっているだけの
傍にあるきれいなものを
皮膚の外にあるからという理由で
無関心に居られたのかというと
それはどうもちがうようだ
命を包みかくすこの皮膚の内側を
星を見るようには確かめられず
内と、外の、境界だけに
無限の興味を注ぐから
触れることが楽しいのは
誰かの境界どうしが
暖めあうからか
静かに蒸発したいということや
そんなことを忘れてしまう
どうやら、二人は境界でできているようだ
それがからだの曲線を描いている
限界と可能性の境目で
まだ溶け込むことを知らないのは
お互いの、もっと内側に近いところで
それでもふれあっているだけの
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