未明 / ****'99/小野 一縷
がらくたに音を立てた雨は
まばらに窓を濡らしただけで 止んでいた
真っ直ぐな風が一通り
花弁を泥の上に 押し退けた後だった
冬よ去らないで
夜よ
暗がりのまま
遠くの街灯だけを残して
明日を闇のまま
ここに 隙間風のように 静かに 流し込んでくれ
老婆が聞かせてくれる童話
惨酷な結末を
彼女が息を呑んで話し出す前に
灯りを消すとしよう
鼻につく 香の香りは もうたくさんだ
蝋燭の火の小さな息の根を ひと息で止めて
皮肉な生態の ひと時の安息が
吹かれて横に なびいて散った 無限を描く煙に滲んで
舞い上がり
また一重 天井の染みに こ
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