彼らの時代/済谷川蛍
 
 「お兄ちゃんなに書いてんの?」
 「小説」
 凛が俺の肩に体重をかけてパソコンを覗き込む。凛は小学6年生の高野山生まれの少年だ。
 「これ、どういう意味?」
 
 青春を肌に感じ、呼吸する。内向的な蕾も開花する人生の一瞬間。何も顧みない。何も悲しまない。何も心配しない。

 という部分を指先でなぞる。
 俺だって適当に書いてるんだ。説明の言葉が見つからない。大体説明する必要もない駄文だろ。俺はタバコの煙をすべて吹き出してから言った。
 「ゴミ」
 凛少年は笑った。
 
 凛という少年は大学の総合科目C〔子ども交流〕で出逢った子だ。俺はこの科目をとって
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