こうかいに、しを/小原あき
わたしは海に潜れないだろう
だって、
こんなに小さな雨粒たちにも
頭痛がする
空も飛べないわたしは
地球の肌を
舐めるようにして
生きている
ナメクジに塩をかけた
あの頃は
トンボの産卵が見たくて
ひどいことをしていた
海に戻れないわたしは
雨が降ると後悔する
洗濯物を慌てて取り込む
傘を差す
雨を一生懸命に避ける
臭いものに蓋するみたいに
もう戻れない
空も飛べない
これ以上進化しない
これ以上退化しない
今しかない
今しか、ない
感じられるのは
風
漂う異臭を無視して
それでもわたしは
その蓋を
たまに開ける
コンポストみたいに
堆肥になってくれればいい
そんなに都合良くは回らない
わかっている
でも、
少しだけ
減っている
そんな気がして
今日も
自分の傷に
塩をかける
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