清水坂下のひと/恋月 ぴの
差しに目を細めた自転車は心なしかやる気に満ちていて
おいどを支え続けたサドルは事務員さんの汗と涙で艶やかに輝き
昔は毎日活躍してくれたんだけどね
今じゃ宅急便で間に合わせてしまうことがほとんどだから
私より年下の男の子がそんなこと話してくれた
路地を抜けると蔵前橋通りに突き当たる
右手には秋葉原らしさの終着点とも言えそうな末広町
そして左折すれば本郷通りへ抜ける坂道がはじまる
運動不足には辛い坂道を登りだすとやがて妻恋坂
ちょっとあえぎながらペダルを漕いで千代田区から文京区へ
教えられた通りに清水坂下の交差点を右折して清水坂の急勾配に足をつく
私にとっての
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