かざみどり/tomoaki.t
多くが欠けている
垂直に切り立つ湖面の繭に
かざみどりがある。
レンズは青根蔓を束ね
夕方が視域を転げ回る。
深さは灰いろとなって(青いろを揺り起こし)、
湿地帯の風の注ぐ
その湖に
パレットの絵具は食われて
いろんな色の煙に
水底はつつまれた。
(かもしれない 、)
と言うのは
湖面の向こう側の
かざみどりが、
屋根が、
家が、
曇る、野原にあるのか
湿った窪地にあるのか
そもそもそちらの世界が
ふくらんだ湖面の奥
揺られているからで、
*
湖の厚さは、
どんどん増大していく。
巨大な線香花火が湖底で燃えているように
煙は湖底と湖面を引き離す。
かざみどりの像はいつまでも幼くて、
僕は歳をとっていくので
何も見えないことはないかもしれないけど、
たまに
湖水が清んだり
僅かにだけ溢れたり
たまに
湖の向こう側に見える。
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