判っているんだけどどうしようもないってもんだよ/ホロウ・シカエルボク
 




雨の向こうに跳んだ蛙は言い残したことがあるみたいに俺を振り返った
機械のような冷たさをもった四月半ばは昏倒した老人が見る氷の夢のようで
増水して喚く小川の流れは叶わぬ夢に執着し続ける綺麗だけどそれだけの女のようだった
古臭いモザイク模様みたいなセメント舗装の小路の小言みたいな凹凸に合わせて
退屈凌ぎの爪先のダンスみたいな拍子で降り続ける雨は道の両端へ向かって流れて行った
路地裏はきっと好天の日以外は人間を拒む癖を持っているのだ
メランコリーに巧みに絡みついてくる雰囲気がなによりのその証拠だ
いつだかに工場のパートに出向いたときに買った短い安全靴は

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