写真のこと/「Y」
 
と、信号が青に変わり、何台もの後続車が近づいてくるのが見える。遠ざかる子犬の影を目の端に残しつつ、その場を走り去るしかなかった。
 並行する通りに入ってぐるりとまわって元のバス通りに戻ってきたのは、まだ時間が余っていたせいもあったが、やはり犬のことが気になっていたせいである。しかし、犬の無事を祈るような気持ちだったわけではなかった。あの動きでは、おそらく助かるまいと思っていたのだ。
 犬は、やはり死んでいた。
 息絶える死に方ではなく、瞬時に生が消え果てるような、そんな死にかた。
 それを目の当たりにしたときの気持ちを説明するのは難しい。
 後悔はあった。しかし、哀しみとは違うものを自分
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