おんな三代/朧月
わたくしの母親は
望まれるべくして生まれた
五人きょうだいの長女です
裕福な家庭で母親がええしの出
というのが自慢なのです
大恋愛の相手がびんぼうにんで
結婚なんてできないから見合いして
ふたをあけたらマザコンだったから離婚した
母親は悲劇のヒロインなのです
母は料理がだいきらい
料理人の祖母の手順だけは
知っています伝えてきます
わたくしはまな板にひょいとあがり
うっすら目をあけながら
どんな風にだってなりかわるのです
父親にだけはなれないけどね
夫にだってなれないけどね
母の弟のおじさんは
祖父そっくりらしいはげ頭
そんな風な血はざわざわと
半分煮えて 半分冷めて
途中下車は不可能らしいので
さっさと着いてほしいものです
さっさとチェンジされたいものです
母の母もびっくりです
母の母はわたくしを
とっても愛してくれました
斜めになった部屋の中
母はすっかりいないので
母の母とわたくしは
おんなという字を語らずに
おんなということかみしめる
母の母はおんなです
母の娘もおんなです
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