処分/湾鶴
市電のレールは暁に根負けし
夏のそれとは違って
鰈のように臥している
遠くまで伸びる 秋色
同じ窓から、庭先の蘭も
肩を落としているのが見えた。
あぁ、
そんなこと忘れるくらい
片付け続けた部屋も、
そろそろ終演を迎える。
処分
あげたり、寄付したり、捨てたりと
物を消していったけど
リサイクルショップへは、行かなかった。
お金となって戻ってくるのが、
たまらなく、たまらなく、嫌で。
もう、さっぱりと。
処分
コーヒー豆は 煎れて飲んだ
煎茶は後輩にあげて
紅茶はまだ 棚に残っている
週末、ようやく壁紙を剥がす。
染みも汚れもヤニも
そして、熱帯魚のような落書きも
風に放って
処分(Bye)
戻る 編 削 Point(6)