夏が来ますよ/ホロウ・シカエルボク
それは誰かにとどけ忘れた
たとえるなら即効性の
殺意みたいなものによく似て
河原で骨になった
後ろ足が一本欠けた猫の
雨に洗われた眼窩の悲しさによく似て
真夜中にだけ客を探す
花売りが行方をくらませた
その夜の客だった
どこかの社長の首だけを盗んで
社長の家族と
花売りの元締めと
警官たちが彼女を探したけれど
彼女の姿は見つからなかった
目の潰れた犬がブルースのように鳴いた
ある晩にすべては打ち切られた
夏が来ます
夏が来ますよ、と
おごそかに二行書かれた手紙が僕のポストをたずねる
差出人の手紙には心当たりがなくって
首をひねりながらも
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