あめ。/志賀羽音
 
 猫が鳴いた朝。
 灰色に塗られた空からは、飴が降ってきた。
 ぽつぽつ降る飴は、空よりも暗い色をしたコンクリートに落ちて、からから音を立てる。
 飴に塗れたコンクリートは色付き、甘い香りを風がさらった。
『――――。』
 呟きは飴音にかき消される。/甘い香りが、鼻を撫でる。
 湿った空気は綿飴のよう。/窓に張り付く滴は水飴。
 頭の中の金平糖はじくじく痛む。/飴降りの世界にくらくら目眩。
――まいまいめまいのくらくらら。
――まいまいめまいのくらららりん。
 耳のそばで、歌が聴こえた。

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