雨上がりの歌/……とある蛙
歩き疲れて立ち止まり
雨がしとしと降り出して
静かに静かに降り出して
道に敷かれた石畳
次第に次第に濡れてゆく
並木の青いプラタナス
静かに静かに濡れてくる
歯を食いしばり空を見る
見上げた空は鈍色で
雨が顔に振り落ちて
次第に次第に顔濡らす
確かに雨は降っていて
見上げた顔に雨が降る。
静かに静かに顔濡らす
雨で濡れてるはずなのに
瞳が潤んであふれ出し
違うもので濡れている
視界が滲んで辛いのは
今降り出した雨のせい?
降り出した雨のせいでは決してない。
笑顔を無理やり作っても
雨が顔を濡らすので
寒くも無いのに凍てついて
顔と一緒に心まで
そのまま雨に立ちすくむ。
静かに静かに雨が降る。
雨がしとしと体を濡らし、。
自分の孤独と後悔が
辛く悲しい思い出と
一緒に雨と流れ出し、
心が次第に空(から)になり、
軽く済んだ空(そら)になる。
そして、雨が上がった時に
ぽっかり浮かんだ雲を見て
萎えた心に芯が出来
勇気が静かにわいてくる。
静かに勇気がわいてくる。
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