四つ手網/殿岡秀秋
 

ぼくらは畦道を奥まであるき
水の流れがゆるやかになったところで
水路に四つ手網を沈める
次兄とぼくが長靴で入る
水路の底は土だ
流れに逆らって
網にむかってあるく
魚がおどろいてにげて
四つ手網にかかるはずだ

長兄が引き上げると
網のそこには水草以外に
何もはいっていない
期待が大きかったのに
がっかりした

「もっと遠くからこいよ」
長兄の言葉にうなずいて
網をおいたところから
離れて水路にはいり
底の泥が舞いあがるくらい
長靴で水をかきまわしながら
進んでいく
「魚よ、網にはいれ」
と願いながら

長兄が網をあげると
小さなメダカが二匹
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