幣帛/山口清徳
静かにね
ただ、静かにね
そうしないと均衡が崩れてしまうから
鈍いフラッシュバックを伴う失速と高揚で
緋色の歯車は子守唄をがなりたてるみたいにして
境界線の倫理を突き抜けてしまうから
その危うげであやふやな存在の証として
僕の足元には四角い玉座があしらえられた
言い換えればこの世界の在りようは
君が僕に吐きかけた真空の神による破綻した愛と
その免罪符ゆえに誕生した狂気によって
永劫の自由が保証されたという一点に尽き
うまく振り返ることも出来ないままで
僕は今でも機械仕掛けの夢を見てるんだ
誰にも気付かれず地軸の針を巻き戻すように
舞い踊る小さな雨粒を手に取って
掻き消す騒音の計りかねる緩和と重なり合う融和さえ
点と点を結んでゆらぐ主旋律を越えるから
もう、それは僕の抜け殻ですらないんだよ
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