草の花/有邑空玖
 

君の手を握ろうとしたのは

風の冷たさの所為ではなく

白い指先がただ心許なくて

僕の傍に繋ぎ止めなくては

消えてしまいそうだからだ

たぶんそれは愛ではなくて

同情などでももちろんない

云い訳めいたこの手紙なら

読まずに捨ててしまっても

怒って突き返しても良いよ

人はみんな草の花なのだと

昔読んだ小説にあったから

確かな君の掌のぬくもりを

忘れたくないと思ったんだ

いつかは消えゆく生命でも

今ここに咲いていることを

神さまはちゃんと知ってる

君は笑ってくれるだろうか

僕にはまだ判らないけれど


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