月の美しい夜だから/瀬崎 虎彦
 
街角ごとに違う風が吹いている
蜃気楼の街灯をぼうっとひらめかせて
サーカスが来るまでに子供たちはベッドへ
サーカスが来るまでは子供たちもベッドへ

どこからたどり着いたのか知らないが
気がつくといつも其処にいた寂寥が
悔恨して茫洋と広がる綿の海を
シリンダー状に伸びていく夕暮れ

こつこつ足音を響かせて未来は
がらんどうの君のおなかに
ディープパープルのように堆積する

もつれてうまく話すことの出来ない
君の三半規管に絡みつく
ウミウシみたいな月の美しい夜だ
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