別れの蛙/……とある蛙
立ち去る君にかける言葉も無く、
立ちつくす僕は一匹の蛙だ
やっと啓蟄になったのに
気が付いた時に
桜の蕾はパンパンに膨らんで
僕らの別れを祝うように
枝は軋んでいた。
僕が声をかけようとしたときには桜は満開で
君の返事を待っている間に
桜は全部散ってしまった。
僕は君に何を語ろうにも
語るべき物語りは無く
引き留めるべき力のある言葉は失われた。
嘘をつけるだけの誠実さすら失われた。
そんな僕は腹を膨らませるしか能が無いのだろうか。
結局、あのときと同じようにけんか腰で。
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